【特許・実用新案】問2
特許権の侵害に係る損害賠償請求に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつ あるか。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
(イ) 特許権者が、特許法第102条第1項の規定に基づいて、自己の特許権を侵害した者に 対し、その侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合、特許権を侵害した者が 譲渡した物の数量のうち、特許権者自らが販売することができないとする事情に相当す る数量に応じた額については、同条項に基づく損害の額とすることができない。
(イ)○ 特102条1項で、損害額算出の基礎とできる数量は、「実施相応数量を限度とする侵害者の譲渡数量ー特定数量」。
「実施相応数量」とは、特許権者の実施の能力に応じた数量。例えば、工場の規模など。
「特定数量」とは、侵害者のブランド力など。
問イにおける「特許権者自らが販売することができないとする事情に相当する数量」とは、該特定数量にあたる。
(ロ) 特許権者は、過失により自己の特許権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対 し受けるべき金銭の額に相当する額を超える損害の賠償を請求することができるが、侵害した者に重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、 これを参酌することができる。
(ロ)× 裁判所が、損害の賠償の額を定めるにあたり侵害者の重大な過失の有無を参酌できるのは、特102条3項に規定する金額を超える請求についてのみ(特102条5項)。
(ハ) 特許権者が、特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を損害の額とし てその賠償を請求するときは、裁判所は、その額を認定するに当たり、特許権者が、自 己の特許権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権の侵害があったことを前提として当該特許権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者が得 ることとなるその対価を考慮することができる。
(ハ)○ 特102条4項。
(ニ) 特許権の侵害に係る損害賠償請求訴訟の終局判決が確定した後に、当該特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、当該訴訟の当事者であった者は、当該終局判決に対 する再審の訴えにおいて当該無効審決が確定したことを主張することができず、当該訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償請求訴訟においても、当該無効審決が確定したことを主張することができない。
(ニ)○ 特104条の4(主張の制限)。本条文は、平成23年度の法改正で新設されたもので、その趣旨は、事件の蒸し返しを防ぐため。
(ホ) 特許権の侵害に係る損害賠償請求訴訟において、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じた場合に関し、特許法には、当事者は、 正当な理由があれば、当該鑑定をするため必要な事項について鑑定人に対する説明を拒むことができる旨の規定がある。
(ホ)× 鑑定人に対する説明を拒む規定はない(特105条の2の12)。なお、鑑定人に対してでなければ説明を拒むことができる(特105条1項ただし書)。
(書類の提出等)
第百五条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
(損害計算のための鑑定)
第百五条の二の十二 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。
問2の回答 3