そこが知りたかった 特許権侵害!

◆権利範囲外の組成物が混在していた場合、特許権侵害になるか?

👉例えば、甲が「Crを10~20モル/%含む金属酸化物」というクレームからなる特許を有していた場合において、第三者乙が20<Cr<30モル/%を含む金属酸化物を製造しているとします。この場合、乙の行為は権利侵害となるでしょうか?

答えは、Noです。Cr含有量が被っていないからです。

 では、金属酸化物中のCr量の大部分は20<Cr<30モル/%であるものの、ごく少量(例えば、全体の3%)のCrが上記10~20モル/%だった場合、乙の行為は甲の特許権を侵害しているでしょうか?おそらく実際の製造の場においては、組成を完全にコントロールすることは困難であるので、このような状態は十分に起こりえると思われます。

 答えは、基本的にNoと考えられます。乙の製造する製品の大部分は、甲の技術範囲外にあるからです。ただし、乙が故意悪意をっもっている場合は、異なる判断がなされる可能性があります。

乙の製造する製品の95%が甲の特許の技術的範囲内にある場合は、どうでしょうか?

 この場合は、権利侵害となると考えられます。乙の製品の大部分が甲の特許の技術的範囲内にあるからです。

 

 次に、乙の製造する金属酸化物中のCr含有量が21モル/%の場合はどうでしょうか?

 この場合は、文言上は権利侵害にならないと考えられます。なぜなら、請求の範囲には、「Crを10~20モル/%含む」と記載されているからです。

 それでは、均等論を適用し、権利侵害といえるでしょうか。すなわち、21モル/%は20モル/%と均等といえるか否かです。これに対する見解は、一般にNoとされています。なぜなら、甲がCr含有量21モル/%も技術的範囲内としたいのであれば、初めらから請求の範囲に21モル/%を含むように記載すれば良いからです。数値限定発明の場合、均等論は適用されにくいようです。

では、上記の場合において、甲が明細書中に規格外の量の許容範囲について明示していた場合はどうでしょうか?すなわち、例えば甲が、「Cr含有量は測定誤差・ばらつきとして、±3モル/%の誤差がある」、と明細書に記載している場合です。明細書を参酌することにより、侵害の可否をいえるか否かです。

 このような場合であっても、明細書が参酌され、権利侵害と判断とされることは難しいと思われます。なぜなら、はじめから許容範囲を含んだ数値を請求の範囲に記載し権利化しておけば良いからです。また、明細書が参酌されるのは、特許請求の範囲に記載された用語が、それ自体では明確でない場合や多義に解釈される場合なのに対し、20モル/%は明確といえ、明細書を参酌するケースに該当しないといえます(特70条1項、2項)。

 

 したがって、甲の立場からすれば、誤差等がある場合、明細書に記載しておくのみでなく、これに対応した請求の範囲としておくことが重要です。逆に、乙の立場からすれば、正しく請求の範囲を理解することで、侵害回避をしえる可能性があります。弊所では、細心の注意を払い、権利侵害に強い明細書、特許請求の範囲を作成します。なお、権利侵害は解釈を伴うものであり、正確にはケースバイケースで判断されます。必要な際は弊所にお気軽にご相談ください。

 

(参考とした判例)

・光学ガラス事件(S62(ネ)第1010号)

・酸素発生陽極事件(大阪地判平成14年(ワ)第10511号)


◆先使用権の範囲は?

👉(準備中)


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