令和3年度 弁理士短答式試験(特許 問4)

 

2022.6.22  弁理士 Gatto della Fortuna

【特許・実用新案】問4

 審決等に対する訴えに関し、次の(イ)~(ホ)のうち、誤っているものは、いくつあるか。

 

1  1つ

2  2つ

3  3つ

4  4つ

5  5つ

 

(イ) 拒絶査定不服審判の請求と同時に、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正をした場 合において、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の 範囲内においてするものでないとして当該補正が決定により却下されたとき、当該決定 について不服のある審判請求人は、東京高等裁判所に、補正の却下の決定に対する訴え を提起することができる。

 

× 「審判を請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない。」(審決等に対する訴え:特187条6項)。

 

地裁をスキップし、高裁への提訴となるので、審決を踏まえる必要があるため。

 

(ロ) 複数の者が共同して請求した特許無効審判につき、請求は成り立たない旨の審決がさ れた場合、当該審決に対する取消訴訟は、その特許無効審判の請求をした者の全員が共 同して提起しなければならない。

 

× 無効審判請求人はもともと各自が単独で請求できる関係であり、合一確定が要請されない(通常共同訴訟)。したがって、取消訴訟は単独(一部の者のみ)でも提起できる(最一判平成12年1月27日平成7年(行ツ)第105号)。特許法には明文化されていないので注意。なお、特許権が共有である場合は、共有者全員を被告とする必要がある(必要的共同訴訟)。

 

(ハ) 特許無効審判の請求に対し、不適法な審判の請求であってその補正をすることができ ないものであることを理由に、被請求人に答弁書を提出する機会を与えないで、請求を 却下する審決がなされた場合、請求人は、審決取消訴訟を提起するに当たって、被請求 人ではなく特許庁長官を被告としなければならない。

 

×  無効審決に対しては、被請求人を被告としなければならない(特179条ただし書)。当事者系審判は基本的に被請求人が被告となる。

 

特178項1項(審決に対する訴え)

[(取消決定)又は(審決)]に対する訴え)

及び

 

(特許異議申立書)]、

(審判)若しくは(再審)の請求書

又は

(第百二十条の五第二項)若しくは(第百三十四条の二第一項)の訂正の請求書

の却下の決定に対する訴えは、

 

東京高等裁判所の専属管轄とする。

  

第百七十九条(被告適格) 

前条第一項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。

ただし、

[(特許無効審判)

若しくは

(延長登録無効審判)]

又は

(これらの審判の確定審決に対する第百七十一条第一項の再審)

 

 

の審決に対するものにあつては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。

 

(ニ) 特許庁長官は、特許無効審判の審決に対し取消訴訟が提起された旨の通知を裁判所か ら受けたときは、審判手続の記録を裁判所に送付しなければならない。

 

×  そのような規定はない。民事訴訟法上の基本原則である弁論主義に基づけば、訴訟資料の提出は当事者の権能及び責任であり、義務ではない。

 

(ホ) 特許出願に対し、当該特許出願前に公知事実Aによって公然知られた発明であること のみを理由とする拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対する拒絶査定不服審判の請 求を成り立たないとする審決がなされた場合、この審決に対する取消訴訟において、裁 判所が、上記公知事実Aとは異なる公知事実Bによって公然知られた発明であるという 拒絶の理由を発見したときは、当該拒絶の理由に関する主張立証の機会を当事者に与え た上であれば、当該拒絶の理由により、請求棄却の判決をすることができる。

 

× 弁論主義の第3テーゼにより、裁判所は、当事者の申し出ない証拠を職権で取り調べてはならない。

 

 

問4の回答 5