令和5年度 弁理士短答式試験(特許 問10)

三鷹深大寺特許事務所

 令和5年度 弁理士短答式試験(特許 問10)

 

【特許・実用新案】問10

 

特許権の侵害及びその訴訟に関し、次のうち、誤っているものは、どれか。

 

1 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての輸出のために所持する行為は、実際にその物を輸出する前であっても、当該特許権を侵害するものとみなされる。

 

○ 特1016号のとおり。

侵害とみなす行為(特101条)は以下のとおり。

 

生産

譲渡等

輸入

譲渡等の申出

輸出のために保持

 

1

物の発明

 

生産にのみ用いる物

2

物の発明

 

生産に用いる不可欠な物

3

物の発明

 

 

 

 

4

方法の発明

 

使用にのみ用いる物

5

方法の発明

 

使用に用いる不可欠な物

6

物を生産する方法の発明

 

 

 

方法により生産した物

 

2 特許権の侵害に係る訴訟において、既に提出された準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載されている場合には、当該営業秘密について裁判所が秘密保持命令を発するための要件を満たさない。

 

× 特105条の411号のとおり。営業秘密の要件を満たさないのは、準備書面又は証拠による開示以外の場合。準備書面等は裁判において当事者のみに開示されるものであり、秘密保持命令対象となりえる。

 

3 裁判所は、訴訟の当事者ではない第三者が所持し、又は管理する書類又は装置その他の物については、査証人に対して査証を命ずることはできない。

 

○ 特105条の21項のとおり。「裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、立証されるべき事実の有無を判断するため、相手方が所持し、又は管理する書類又は装置その他の物(以下「書類等」という。)について、・・・」。第三者は含まれていない。

 特許権侵害は侵害の特定が難しい場合が多いので、従来においても民訴法の特例である文書提出命令や検証物提示命令(特105条)が設けられていた。これらに加え、方法の発明に掛かる侵害特定手段として査証制度も創設された。しかし、あくまで特例であり、査証制度が適用されるハードルは非常に高くなっている。このことからも、設問にあるような、第三者までを査証先に入れることはないとの考えに至ることは自然の流れといえる。

 

4 裁判所が査証人に対して査証を命ずるためには、特許権を相手方が侵害したことを疑うに足りる相当な理由があると認められることを要し、査証を申し立てる当事者は、申立書に、当該理由があると認められるべき事由を記載しなければならない。

 

○ 特105条の21項。査証は、当事者の申し立てに基づき裁判所が命ずる。

 

5 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所が第一審の裁判所となる特許権の侵害に係る訴訟において、裁判所が、特許法の規定に基づき、当事者の申立てにより、広く一般に対し当該事件に関する特許法の適用その他の必要な事項について意見を求めることは、第一審、控訴審のいずれにおいても可能である。

 

○ 特105条の2111項、2項のとおり。

 特許権侵害は基本的に当事者系訴訟であるので、広く一般を対象とした第三者の意見を裁判所が求める制度は特殊ともいえる。対世効的側面をもつ特許ならではの制度と思われる。令和3年に追加された新しい条文であり、設問となり易い。

 

 

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